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映画のプロダクション(製作)が始まって、全部の部門の人達が勢揃いした頃、全員が同じコミュニケーション レベルで動いているかの確認のため、プロダクション ミーティングが行われる。一つの作品の製作には、常に変更、改定が起き、 情報は毎日どころか時としては1時間も立たないうちにコロコロ変わったりすることなど日常茶飯事。と言うわけで、全ての部門がちゃんと最新の情報のもとに動いているのかを確認していくことが製作過程の全てを通しての重要な課題だ。

 

さてその「意思疎通」を図るためのメーティングがこのプロダクション ミーティング。つまり全体会議のことで、この会議ではプロデューサー、ディレクターから、我が美術部から、建設部、装飾部、小道具部、衣装部、メイク部、撮影部、照明部、特殊効果部(スペシャル イフェクト)、ビジュアル効果部(ビジュアル イフェクト、製作事務部、車両交通部、ロケーション部、などなど、全ての部門の人達(もっとも、各部から全員ではなく、各部数人の代表者)が一堂に揃う。そして台本を1ページごとに読んで行き、出てくる全てのシーンについて 各部の準備確認や各部からの質問がされる日。つまり台本全部のページに目を通して、色々な部からの質問応答をするのだから、ミーティングは ランチを挟んで延々何時間にも及ぶことも稀では無い。まあ、逆に言えば、しょっ中ミーティングやってるような暇がないので、まとめてやってしまうわけでもある。この写真は「ブロンド」の映画の時の場面。あまりに長いミーティングでまた一時休憩をとっているところ。

 

このミーティングの進行/司会役はファースト アシスタント ディレクター(略して First AD, ファースト エイ ディー)という人が受け持ち、ディレクターの意向を確認しながら会議を進めて行く。この日は前々から色々な質問に答えてもらいたくても滅多に捕まらないディレクターが出席していて、直接質問できて、上手くすれば(ディレクターが準備できていれば)直接答えが聞ける貴重な日でもある。

 

話はそれるが、この進行役のFirst ADとは、撮影現場ではいつも大声あげて全体の統率を取り、撮影開始時には「はい、お静か〜!(Quiet Please!))と言って撮影進行係りを務める役。そしてそのシーンの撮影が終わった時には「カット!」と言う人。監督の補佐役だから責任も重いし、各部門から質問責めに会ったら、嘘八百でも答えをするのも仕事の一つ。どの部門もいわゆるステレオ タイプがあるが、典型的なFirst ADは「声が大きい、押しが強い、図々しい、態度デカイ、自己チュー」などが主(笑)。まあ、どこの部門もアクの強い人達ばかりで、それを現場でまとめて一つの方向へ向かせる役だから、そう言う態度になるのも当然だろうが。これって、いつも思うのだけれど、カウボーイが牛の群れを馬に乗って追っかけながら一つの方向へ動かせるのとよく似ている(笑)

 

なんて、ここまで書くと、ずいぶん真剣で大変そうなミーティングのようだが、実のところは、まあ司会やディレクターのキャラクターにもよるけれど、ジョーク飛ばしながらのカジュアルなミーティングの要素もかなり強い。

 

さて、出席者はこのミーティングについてどう思っているのか。。。実のところ、誰しもがこのミーティングは必要なこととは理解しつつも、誰もが時間に追われているので「あ〜、ミーティングに出なくちゃいけない、時間もったいない!」と思って出ている。というのも、ミーティング中、自分の部の仕事に関係することには勿論一生懸命聞いたり質問したりするけれど、他の部の仕事で自分たちには全く関係ないことの話の時には、恐らくノートに落書きしたり、自分の部のお仕事分担リストを作ったり、スマホでこっそりテキストしたり、テキストやメールの盗み読みしている。例えば美術部なら、セットやロケの話は真剣に聞くが、そこで進行する俳優の衣装やメークに関する話には正直関心無い。だが、逆に衣装やメークにすれば、俳優が立ってるセットの話などはどうでもいいが、俳優の着る衣装やメークについては最大の関心がある。とい言うわけで、自分達の事以外の時は「時間の無駄だあ〜!」と思ってしまう。これって、なんか中学の生徒会レベルかも(笑)。

 

これが日本の会社のミーティングだったらどんなものなのだろうかとふと思った。私は正直日本で会社勤めしたことが無いので知りようもないが、もしかすると役職、上下関係がミーティングでの発言のし易さ、しにくさに影響してくるのではないかなと思う。

 

映画やテレビのプロダクション ミーティングでは、監督が最終的には最大の力を持っているとは言え、その監督にしても、各部の仕事のサポートがなければ映画製作ができないことは重々承知。また各部も、どこの部が他より力があるということはあり得ず(と言っても、みんな自分のところが一番大事と思ってはいるけれど)、どの一つの部が欠けても映画にならない訳だから、全て対等なレベルだと言うことは面白い。

 

そう思ったら、これってやっぱり中学の生徒会だなと思えた。もっとも生徒会長の後ろで先生が睨みを利かせていると言う状況ではないけれど。

 

ミーティング出席者が対等であると言うことは、発言することに肩書きによる差別が無いと言うことで、また自分や周りのポジション/肩書きによるプレッシャーが無いと言うことでもある。これが会社だったら、上役の際揃いしたところで発言すると言うのはやはりプレッシャーがかかるのかな。

 

それにしても、人前で発言するとい言うことはやはりどこかにはプレッシャーがあるものだと思う。 だからジョークも飛ばせるようなカジュアルな雰囲気であると言うのはいいことだと思う。やはり、自由な環境ほど色々な意見が聞けるのだと思う。

 

一度日本の会社のミーティングってどんなものか見てみたいなあ。