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アベンジャーズ:エンドゲームが遂に公開された!公開直前の先週、関係者一同のための試写会に行って来ました。Crew Screening (クルー スクリーニング)と言うのだけれど、これにはいつでも打ち上げパーティーにも増して知らない人が沢山集まる。というのも、直接に仕事をした関係者だけでも相当な人数なのだが、その人達の連れ合い(妻、夫、ボーイフレンド、ガールフレンド、エージェントやら)がみんな出かけてくるので、もう大混雑と言う訳。それでも私にとっては、アベンジャーズのArt Departmentで一緒に仕事をした仲間たちと会える絶好の機会なので、頑張って出かけることにした。ロスのとんでもなく混んだラッシュアワーの道を一時間かけて UCLA (カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校)のお膝元にある学生街ウェストウッドの映画館まで到着。案の定ものすごい人出で、 会えるといいなと思っていた友達には残念ながらほとんど会えず、溢れた観客を受け入れる2番目の映画館でやっと空いた席を見つけて着席。

 

さて、映画の上映時間になるや、総プロデューサーのビクトリア アロンソが大画面の前にマイクを握って登場。「関係者の一人一人に心からお礼致します」の挨拶の後、「この映画は三時間の長編だから、しっかりトイレに行って来なさ〜い!」と号令がかかり、あっという間に何十人もの人たちがトイレに向かった。後で聞いた話だが、日本でこの映画を見てくれた友達は、三時間とは知らず、途中でトイレに行きたくなったのを我慢して見てくれたそう。ご苦労様!

 

と言うわけで、上映前のトイレも終わって全員また揃ったところで上演開始。それからの三時間は三時間と感じないくらい、これでもか、これでもかという場面が盛り沢山。最後は全ヒーロー総結集で極悪サノスを倒しにかかる壮絶な戦い!それはそれは見ごたえのある作品だった。

 

私にとっては、この映画のデザインをしていたのはもうほぼ2年も前のことだったので、細かいことは正直忘れていた。また、ストーリーがどうなるかはマーベル コミックの極秘中の極秘だったため、 ほとんど誰も脚本を読むことは許可されず(アベンジャーズ:インフィニティーウオ—の時は、一度だけ時間制限付きで脚本を読んだことはあったが、エンドゲームは皆無)、この映画を見るまで自分のセットがどこでどう出てくるのかさえ良く分からなかった。と言う訳で、遂に秘密が解き明かされて映画の画面を見たときには、「へ〜、ああそうか、なるほど〜!」などと思いつつ、そして遂に自分がデザインしたセットが出て来たときには、やはりとても懐かしかった。私がデザインに関わった主なセットについては以下の通りです。

 

1)極悪非道のサノスのロッジ

これはなかなか面白いセットで、平面図で見ると十字形をしている。壁や屋根には様々なテクスチャー(材質)が持ち込まれ、柱もわざと斜めに立てられて、部屋の隅に は岩があったり。その上建物の真ん中には円形の「囲炉裏」があって、果てはそこをめがけて「建物をぶち破ってハルクやソーが飛び込んで来る」と言うので、さあどうしたらうまく柱にも当たらずぶち壊れるかなどと色々検討してはデザインを修正し、、、と言う訳でこうして苦労して全て細かいところまでデザインしたサノスのロッジを、外観も、内装も期待以上に良く撮ってくれていたのにはとても嬉しく、やり甲斐を感じた。

 

2)雨の降る真夜中の東京での戦いのシーン

このシーンには私も知らなかったのだが、日本人俳優の真田広之氏が登場。これはアトランタのダウンタウンでもかなり荒れた一角をロケ地として使用。昼間でもホームレスがオシッコしていたり、ドラッグアディクト(麻薬常習者)が居てわけのわからないことを大声で叫んでいたりと言う街角。また、ハンドバックは勿論、仕事道具の巻尺などをうっかりその辺に置いたりしたらいつ何を盗まれるかも分からないと言うちょっと危ない区域。現場測量を友達と二人でしたときには、アトランタ警察の警官がずっとつきっきりで見張っていてくれた。巻尺で色々計測した時も、もし路面が濡れてでもいようものならお互いに、「ああ、ダメ〜、そこ触るな〜。臭い!オシッコだよ〜!」と言い合ったのを思い出す(笑)。ここをネオン溢れる東京の、新宿ゴールデン街のような、フューチャリスティックかつレトロな街に仕立てたのだけれど。。。このシーンは、ダンスクラブや飲屋街などもデザインしたのだが、最終の映画の画面で見られなかったのは残念。ネオンやその他の日本語の看板については、当時ブッと噴き出すようなトンデモナイ訳もあり、「これでは意味が通じない」と言って直すように言ったものも色々あったのだが、「見た感じがいいからこれでいいんだ」と押し切られたのもあり。 もうあとは「ドキュメンタリー映画じゃないんだから、どうにでもせえ〜!」と放っておいた。が、最終の映画の画面で、下手くそな金釘流の字で書かれた「吠える。。。」と言う看板がデカデカと出てきたのには、「ああやっぱりねえ〜」と苦笑。

 

何はともあれ、自分のデザインしたものが映されていようがいまいが、やはり映画が完全に出来上がって劇場で公開されるのを見る時には満足感がある。そして、それがアメリカ国内だけではなく、日本やアジア各国、ヨーロッパなどで見てもられると思うと、映画の、ビジュアルの、そしてデザインの持つ力を改めて感じる。真田広之氏があるウェブサイトのインタビューで話していた中で見つけたのだが、「セットをいくつか見せてもらいましたが、作りこみのすばらしさ、スケールの凄さ、すべてにおいてさすがだなと思いました」ああ、こうして誰かはセットを見ていてくれたんだなと嬉しかった。