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今回は「回顧録」。ハリウッドのデザインで史実とフィクションの狭間に置かれることはしょっちゅうだが、その例をいくつか思い出して笑った。

その1:ジュラシックワールド

これはもう言わずと知れた映画「ジュラシックパーク」のシリーズ映画の一つ。第1作が当時のコンピューター技術を駆使し、大監督スピルバーグがその才能を発揮して素晴らしいエンターテインメント映画を作り出し、世界中で大ヒットした作品と言うのはみなさんご存知でしょう。ジュラシックパークは以来、最近のマーベルコミックのようにシリーズものとなって数年に一度は新作が発表されている。

 

と言うわけで、私が第1作の「ジュラシックパーク」のデザインチームでデザインして以来ウン10年振り、久し振りに「ジュラシックワールド」に参加した時のお話。この映画では、第1作に出てきた大きな円形のビジターセンターは「すでに朽ち果て蔦に覆われた廃墟と化して、新しいビジターセンターが建てられ。。。」などと言う部分があり、いやでも月日の流れを感じさせられたが(笑)、その他に。。。。勿論主役の恐竜達が登場。しかし、である。第1作目の「ジュラシックパーク」が制作されて以来すでに25年以上経っている。だから、科学は進歩し、歴史的、科学的発見も数多くなされている昨今。 「ジュラシックワールド」制作の時点ではなんと新発見として、恐竜達(特に小型の恐竜達)はより鳥類に近いものが多く、羽根が生えていた。。。などと言う見解が出てきた(「ティラノザウルス羽毛問題」など)。話は少し外れるが、これを聞いた私は「やっぱりねえ、そうだよね」と心から納得。と言うのも、私は大の鳥嫌い(鶏肉は食べますが)、というより鳥が怖い!なぜなら、鳥の目を見ていると、恐竜や爬虫類の目を見ているようだし、ましてやその足を見るともうつめは尖っているし、やっぱり恐竜を思い出してしまい。。。。だから、恐竜が鳥類に近いと言う発見には「それ見たことか!」と全く同意だった。話戻して。。。と言うわけで、アートデパートメントのリサーチボードにも鳥の写真やイラスト、恐竜の頭に羽の生えたイラストなども並んだ。

 

しかし、では科学の進歩に伴い、恐竜のデザインを変えるのかと言うことになると。。。勿論、NO!です(笑)。つまり、もう第1作の「ジュラシックパーク」で強烈なイメージが確立されたティラノサウルス(こちらでは「ティーレックス、T-Rex」と言っている)やヴェロキラプトル(通称「ラプター」)達。これを科学の証明に従って急遽姿形を変えるのか?と言ったら、勿論、変えません!もう「ティラノサウルスは建物踏みつけ、バッタバッタと歩き回る超悪者、ヴェロキラプトルはピョンピョン飛ぶ悪者」なんて言うイメージが出来上がっていて、観衆もそれを期待しているのだから、今更イメチェンなどできない。またこれはハリウッドの娯楽映画であって、ドキュメンタリー映画を作っているのではないから、史実と多少違っていようと、興行成績が上がってくれれば、もういい!

 

と言うわけで、こう言う時私たちは苦笑しながら、「ああ、また例の『Artistic Freedom』 ! (『芸術的な自由』とでも訳しましょうか)」と言っては、またぞろみんなで揃ってハリウッドのハッタリを効かすのです。でもねえ、これを見て育った子供達は恐竜って羽根などないって思い込むだろうし、あるいは、学校で習うだろうことと映画の違いに戸惑うだろうなあとも思うのだが。。。ある意味、視覚に訴える映画の持つ影響というのは想像以上に強烈だから、フィクションをノンフィクションらしく見せる映画って怖いなあ〜と思うこともあります。でもまあ、子供達が逞しく育って、「あれはハッタリ効かせた娯楽映画だったんだ〜!」とある時点で見抜いてくれる時がくるでしょう。「えっ、サンタクロースっていなかったの?」って気付くように(笑)

 

こうして今日もまたハリウッドのハッタリ効かすお手伝いをしています(笑)!