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人間トシを経るに連れ、「今の若いもんは〜!」と言うようになる。 私も勿論そうだが(笑)、なんと私より遥かに若い30代前半のアートディレクターの友達も「今の若いもんは〜!」と 言ったのには笑った。曰く、「僕はいわゆる『いい加減』とレッテル貼られているミレニアル世代(Milllennials、25歳くらいから40歳位までの世代)の前半部の人間だけれど、ミレニアル世代後半部の20代のヤツらはとにかく自分勝手で、自己チューで、ホントに呆れる!」 ところでこの彼は「いい加減」などとは程遠く、才能あり、本当に気のつく、責任感のある男だ。だからミレニアル世代全員が呆れた奴らなのでは無いが。。。
こうしたミレニアル世代(ひいては20代をまとめて「20サムシング」と言うのだが)について、彼や私が何に呆れるかと言うと。。。一言で言えば「自分は****を持って当然だあ〜!」あるいは「自分が****をして当然だあ〜!」という態度。これは英語でいうと、sense of entitlement. 例えば、「自分にこんないい仕事が来たのは当然だあ」と言った風。とにかく鼻持ちならない自分勝手な解釈で、そこには****を手に入れてありがたいという気持ちや、他にも沢山この仕事を欲しい人たちがいる中で自分はラッキーにもそれを手に入れたんだという理解が微塵もない。その上彼らは、余り責任感無し、自分の利害第一で動く、仕事をきちんとフォローアップしないと言った事など。要は「いい加減」に尽きる。。。とまあ、ここまで書くともう20サムシングのバッシングをしているようだが、これは現場の経験あるプロの友達の一致した意見なのです。ミレニアル世代の全てがそうでは無いものの、時としてこういういい加減なミレニアル世代のこの態度を見てはみんなで呆れ返っている。
映画やテレビの美術部の現場では、必ずといっていいほどこのミレニアル世代、もしくはもっと若い、駆け出しの人たちが雇われる。彼らの仕事は、美術部のPA( ピーエーと言って、Production Assistantの略)、すなわち「小間使い」 。人間誰だってどこかから仕事を始めなくてはいけないのだし、どんなことでもするからこのポジションに就きたいという人達はアメリカ中ならず、世界中に掃いて捨てるほどいる。だからその競争に打ち勝ってか、あるいはラッキーなコネによって得たこのPAのポジションは本当に貴重なものなのだと認識して欲しいのだが。。。。人によっては、これがとにかく面白くない。今ではみんな大学は出ているし、果ては修士号まで持つ人達も いる。しかし、教育レベルはどうあれ、経験の無い駆け出しであることには変わりが無いのだから、ラッキーにもやっと美術部で雇ってもらった〜!と感謝の念を持って頑張って仕事してくれればいいのだが。。。なんと、「こんな仕事自分に来て当然」から始まって、果ては高学歴のある自分がこんなとんでもない下っ端のPAの仕事をするなんて許せない、自分こそ周りのプロ達と同じ仕事をしてしかるべきだ!と思ってしまう。 そしてそれはその人の仕事の態度に必ず出てくる。これまで何人ものこうした人たちを見てきた。ある人はブルドーザー式に押しまくってみんなに呆れられ、ある人は泡のように消えて行った。 様々なことを学べる本当に恵まれた環境に居る間に、できる限りのことを吸収しようとする態度さえあれば、周りの先輩達も喜んで教えてくれるのに、それはそれは勿体無いと思う。そして、与えられた仕事を全うする責任感、 フォローアップ能力はハリウッドで生き残るためには必要な事なのに、それも身につけずに、 「自分はなんでもできる、才能あるんだ、凄いんだ〜!」と突き進む。ある意味、そうした盲目的なカラ自信を羨ましいと思う事もあるが(と言って、そうはなりたく無いが)、でもねえ、ハリウッドはそんなに甘くないよ。
さて、こうした「いい加減さ」をピッタリ表した 言い訳ジョークで有名なものに「犬が宿題食べちゃいました〜!(だから宿題できませんでした〜!) The dog ate my homework!」と言うのがある。要するに自分で責任取らず、誰かの(犬の)せいにしてその場をしのぐ言い訳で笑える。
ところで、この「犬が〜」の言い訳はもう誰も信じない言い訳なのに、ある日なんと私の教えているクラスの中でそれに酷似した言い訳を聞いた!やっぱりミレニアル世代かあ〜!修士課程にいるクラスの生徒達は最年少が23歳、他は20代後半だからまさにミレニアル世代。ある日ディティールを描いてくる宿題を出したら、23歳の彼、図面の前半分はうまくかけているのに、その後半分が途中までであとは紙の端で切れている。私が「この残りどうしたの?」と聞くと、「紙が足んなくてかけませんでした〜!」の答え。みんなで大笑いだったが、私は「あのね〜、紙が足りなくなったら足しゃいいでしょ、 セロテープで。そんな言い訳すんな!」翌日クラスの全員に、「今後一切、『紙が足らなくなった』などの 言い訳は許さない!」とメールで御触れを出した。つまり、コレ、お笑いにはなるが、実際の仕事場ではこんな人間使えない。私は彼らに今からプロ意識を持って欲しいからの御触れだった。
翌週のクラスでは、みんな「言い訳だめ〜!」とお互いに笑いながら言い合って、一生懸命図面を描いていた。
